野々宮家とは 
その昔、神様と〈約束〉を交わした一族。
神様と同じ緑に茶色の混じった〈みどりの眼〉を持っており、不思議なものをとらえることができ、また神様の力の一部を代々受け継いでいる。〈あわいもの〉(妖)関連の不思議の相談事を請け負ったり解決したりすることも。千年坂を登った先に和風の大屋敷があり、地主の旧家でもある。
本作は昭和初期を生きる七人兄妹を中心に、四季折々の不思議な出来事を綴ります。
 本家のある街について 
主な舞台は明治維新と共に発展した地方の街「白野」。
盆地の元城下町であり、市内や郊外へはバスで移動が可能。また、蒸気機関車の止まる駅もあり交通の便が良い。
農業と工芸が発展しており、桃は名産品。大きな川が街を横切っており、河岸の欅並木は人々の憩いの場である。明治の到来とともに解体された平山城址の中には高等中学校があり、街の少し外れに宣教師の開いた私立の女学校が建てられている。農業系の専修学校もある。中心街はモダンな洋風建築が立ち並び、銀行・教会・百貨店・映画館などもある。京都に近い。
 野々宮家の七人兄妹 
・一春(いちはる)
野々宮家の長兄にして現当主。植物に愛され、樹木の精と仲が良い。街の不思議なことの相談を受ける。三十歳の物腰柔らかな青年。着物を好む。

・久二彦(くにひこ)
野々宮家の次兄。ある事情により常世で暮らしている。兄妹の中でも一番の美男子。画家の妻がいる。二十九歳。

・三寿々(みすず)
野々宮家の三男。女学校で国語科の教師をしており、呪い解きの才がある。眼鏡をかけていて、料理が得意。許嫁がいる。二十七歳。

・星四朗(せいしろう)
野々宮家の四男。外務省に務めており、現在英国に赴任中。背が高く、どこか近寄りがたい印象を受ける青年である。死者を見、声を聴くことができる。二十五歳。

・五月(いつき)
野々宮家の五男。京都帝大の学生。弓道が得意な、物静かな青年。動物に好かれ稀に意思疎通が図れる上に、動物の姿の〈あわいもの〉と関わりが多い。二十一歳。

・六都子(りつこ)
野々宮家の長女。六番目に生まれた。美少女であり、女学校で優秀な成績を収める秀才。薙刀が得意。いわくつきの道具が仕舞われた本家の蔵の管理をしている。十七歳。

・七尊(ななたか)
野々宮家の六男だが、七番目に生まれた末っ子。六都子とは双子である。高等中学校に通う。チェロが得意。離れの図書館の管理を任されている。十七歳。

・金衣公子(きんいこうし)
その昔、野々宮の先祖と〈約束〉を交わした神様。長い白髪に緑に茶色の混じった眼、男とも女ともとれる美しい容姿をしている。代々続く野々宮家を見守り、力を与える存在。野々宮家の中庭の白梅の古木が依り代で、気まぐれに姿を現わしたりする。
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