わたしのお気に入り
 新しい世界はあまりにも鮮やかで、目に入るもの全てが摩訶不思議な夢のようでした。
 まるで「不思議の国のアリス」のアリスになったような心持ち。
 記憶にある屋敷は時を留めているようで、けれど、確かに長い年月が経ったと知るには十分変化していました。居間に置かれた長方形の薄い箱はテレビという「映像」を映すもので、電話は片手で持てるほどにすっかり小さくなり、なんと電話交換手はいらないらしいのです。加えて手紙を送ったり色付きの写真を撮ったり、お買い物もできるというのですから。洗濯は手で洗わなくてもよいし、薪をくべなくてもお風呂はボタンひとつで温まります。お料理もコンロというものの摘みを回せば火が付き、火力を変えるのも簡単なのです。
 なんでも、これらは「テクノロジー」が発達したからなのだと静さんは言います。新しいことを教えてもらう度、わたしはますます不思議の国に迷い込んだ気分になりました。そして、とうとう熱を出して二日間寝込むという失態をさらしてしまったのです。
 ああなんて情けないの、とわたしは恥じ入るばかり。
 けれど、静さんとハナさんはとてもお優しいのです。ゆっくり慣れていけばいいから、と静さんはわたしの焦りを見透かしたように言いました。
 体調が良くなったその日、静さんは、
「デートをしませんか?」
 とわたしに訊ねました。
「でえと?」
 わたしが首をかしげると、彼はしばらく考えるように天井へと視線を彷徨わせました。わたしにもわかる言葉を探してくれているのです。そして、ぴったりの言葉を見つけたのか、少し悪戯っぽく青い目を細めました。
「……逢引きのことです」
 その言葉を聞いた途端、わたしは顔が熱を持つのを感じました。きっと真っ赤になっているだろう頬を両手で包み隠して、そっと視線を外しました。なんだか面映ゆくて、静さんの顔が見られなくなったのです。
 かの時代ならば婚前の男女交際など不道徳極まりない、と非難されるでしょうが、この時代ではそうでもないようで少し戸惑います。けれど断る理由もなく、頷いたのでした。
 ハナさんが持っている着物の中から紺地に大きな葡萄柄のモダーンな小袖を拝借し、金糸雀色の帯をお太鼓に結んで向かい合った姿見には、少し大人びいて見える少女が映し出されました。帯留め金具は可愛らしい狐。ハナさんはわたしを化粧台の前に座らせると、鼻歌を歌いながら髪を清楚な三つ編みに整えてくれました。そして最後に桃色の口紅を唇に落とすと、にこりと笑って頷きました。
「楽しんでお行きなさい」
 ハナさんは青い美しい瞳を片方だけ細めて、鏡ごしにわたしに視線を送りました。わたしはますます恥ずかしくなって、「はい」と小さく首を縦に振ることしかできませんでした。
 玄関へ向かうと、静さんはわたしの姿を見留めてわずかに目を見開きました。
「可愛らしいですね」
 そう言って、わずかに口の端を持ち上げます。わたしはもう赤くなるばかりで、困ったものです。
「……あの、おおきに」
 思わず、そっけないような言い方になってしまいました。静さんの口から自然と零れるくすぐったい言葉は、未だ気恥ずかしい心持ちがして、慣れそうにありません。
 どきり、と跳ねる心臓の音を抑えるように胸に手を置き、彼と連れ立って屋敷を出ました。殿方の隣を歩くのも、わたしにとっては不思議で奇妙な感覚がいたします。小さい頃から、女子はお淑やかで控えめに決して出しゃばらないこと、と言われて育ちました。けれど、静さんはそのどれをも気にしないようで、いつでも対等にわたしのお話を聞いてくださるのです。
 金木犀の季節が終わり、西洋風屋敷の塀越しにかすかな残り香が、時折鼻をくすぐります。
「少し散歩をしながら行きましょうか」
 静さんは穏やかな声音で言いました。
「どこへ行くのでしょうか?」
 わたしは顔を上げ、訊ねます。
 すると静さんはわたしにちらりと視線を送り、「着くまでの楽しみ」と答えました。それはどこか少年らしい表情です。
 静さんは艶やかな前髪を横に流すように軽く整え、首を覆う暖かそうな黒い生地の上着に細身の黒ズボンを合わせていています。上背があるので、飾らない出で立ちでも優雅に見えて、思わずじっと見入ってしまいそうになります。その足取りは、ゆっくりとわたしの歩調に合わせてくれているようでした。
 疎水沿いの小道から外れ、形様々な自動車が走り去っていく大通りを横切り路地を一つ曲がると、和と洋の建物が建ち並ぶ閑静な場所に出ました。その中に『カフェ・ムジカ』と看板を掲げた喫茶店がありました。大きく切り取った木枠の窓辺には、それぞれ違う楽器を持った可愛らしい陶製の人形が並べられています。静さんは慣れた足取りで、椿を象ったステンドグラスがはめ込まれた扉を押しました。からんからんと鈴の音が来客を告げます。
 そして、身体をずらして「どうぞ」とわたしに先に入るように促しました。
 おずおずと扉をくぐると、瞬く間に香ばしい珈琲の香りが鼻孔をくすぐり、すぐに「いらっしゃいませ」と低くも穏やかな声がかかりました。見れば、眼鏡を掛けた壮年の殿方が作業場を仕切る細長い机の向こうから顔を出しました。整髪剤で固めたその髪は見事な銀色で、柔らかな笑みが印象的です。彼は静さんを見止めると、おや、と片眉を器用に上げました。
「誰かと思えば、静くんやないですか」
「お久しぶりです、マスター」
 静さんは軽く会釈をして、どこか照れた様子で笑みを浮かべました。
「この喫茶店は小さい頃から祖父と一緒によく来ていたんです」
 そう説明して、慣れた足取りで窓側の席へとわたしを案内してくれました。すぐにマスターがやってきて、お冷と長細い冊子のようなものを飴色の机にそっと乗せてくれます。
「静さんの彼女さんですか?」
 にこやかにマスターはわたしと静さんとを見ました。
 言葉の意味がわからないわたしは首を傾げ、静さんに視線を送りました。けれど彼は珍しく説明するでもなく、マスターを見ると、
「いずれそうなればいいな、と」
「ほお、珍しく強気や」
 二人は目配せをしてにやりと何やら企むような笑みを浮かべたのです。わたしは首を傾げたまま眉を寄せましたが、静さんは微笑を崩そうとしないので、諦めて細長い冊子を手に取りました。
 それはメニュー表というものでした。写真と一緒に、注文できる食べ物の名前と簡単な説明が書かれているのです。思えば、わたしは初めて喫茶店というところに入りました。あの時代、大阪でカフェーというものが流行っているという話を聞いていましたが、それらはもっぱら殿方のための場所のようで、女子には遠い世界の話だったのです。
「たくさんあって悩みますね」
 見たことのないケーキやゼリーの菓子類に、料理はハンバーグやカツカレーなどと西洋風なのです。どれも美味しそうで、わたしは何を選べばよいのかついに迷い始めました。そして、ある飲み物を見つけました。それは鮮やかな緑色の飲み物で、上にはアイスクリンが乗せられたクリームメロンソーダというものでした。
「わあ、可愛らし」
 わたしの手元を覗き込んで、静さんは「懐かし」と普段あまり使わないようにしているらしい京都弁で呟きました。
 視線を上げると、静さんは少年のように青い瞳をきらきらとさせていました。
「子どもの頃、ここにくると必ず祖父が頼んでくれたんです。なんだか特別な気がして、大好きでした」
「大切な時間やったんですね」
 微笑んだわたしを見つめ、そして、「ええ」とはにかんだ静さんは過去に思いを馳せているようでした。そんな彼の過去に少しでも触れられたことが、特別な気持ちを芽生えさせるのだから不思議です。彼と出逢ってから知った感情がたくさんあるのです。そのどれもが、心を温かくしてくれるのです。
 静さんは珈琲を、わたしはソフトクリームソーダを頼みました。待つ間、店内をゆっくりと見回しました。黄色い灯りは柔らかく、飴色の床と合わせた飴色の机は形様々、猫足の椅子の背は臙脂のび天鵞絨張りで、どこか懐かしい気持ちにさせられます。それぞれの机にステンドグラスの卓上照明が置かれ、そのモチーフは薔薇に菖蒲、椿、向日葵とそれぞれに違うのです。店内にはお客さんがわたしたちを含め三人、思い思いに本を読んだり話に花を咲かせたりしていました。
 そして、お店の奥には一段上がった舞台のような場所がありました。その片隅にはピアノとセロが置かれていて、わたしは見知った楽器に「セロ」と口にしていました。静さんはわたしの視線を辿り、ああ、と納得したように頷きました。
「ここは夜、ライブバーになるんです。音楽を奏でたり歌ったり聴いたりすることが好きなひとたちが集まるのがライブ。僕も学生の時に、息抜きに出演させてもらったりしてました」
「息抜き?」
 わたしは小首を傾げました。
「……多感な少年時代が僕にもあったんですよ」
 静さんは苦笑を浮かべて遠い目をしました。わたしは十代の静さんを想像しようとしましたが、上手くいきませんでした。
 やがて、マスターが銀のお盆を携えてやってきました。静さんの前に珈琲を、そしてわたしの前にはグラスを置いて「ごゆっくり召し上がってください」と柔らかな笑みを残して作業場へ戻っていきました。
 わたしは歓声を上げそうになるのを堪えて、じっと目前のクリームメロンソーダを見つめました。透明なグラス越しに鮮やかな緑の泡がしゅわしゅわと動いています。白いアイスクリンの横に、鮮やかなピンクのさくらんぼが添えられてとても可愛らしいのです。
 こんな可愛らしい飲み物があっていいのでしょうか。遠い帝都の資生堂パーラーのソーダ水は、女学生たちの憧れでした。京都には新しいものがやってくるのが遅かったのです。それが、こんな風に気軽に飲めるようになっているなんて夢のよう。
 わたしは細長いスプーンを手に取り、アイスクリンをそっと掬いました。それを慎重に口へ運べば、瞬く間にバニラの香りと滑らかな甘さが広がって、思わず頬に手を当てました。ストーローという長い管をグラスにさして、メロンソーダを飲めば、しゅわしゅわとした爽やかな甘さが広がります。アイスクリンのなめらかさとソーダの弾けるような感覚がとても合うようなのです。
「なんて、美味しいんやろ」
 ため息をつくように、思わずつぶやくと、
「気に入ってくれたようで、よかったです」
 静さんは微笑を浮かべ、頬杖を突きました。
 そして手を伸ばし、親指でわたしの口の端を拭ってきたのです。反射的に身体を引くと、彼はくすくすと笑いました。
「アイスクリームがついてましたよ」
「……おおきに」
 わたしは己の顔が瞬く間に赤くなってゆくのを感じました。それを誤魔化すようににこりと笑みを浮かべて、
「静さんも食べてみますか?」
 と尋ねたのか悪かったのでしょうか。
「詩子さんが一口くださるなら」
 静さんはそっと目を細めます。わたしは少し震える手でアイスクリンを一掬いして、スプーンをそのまま静さんへ渡そうとしました。けれど、その前に静さんがわたしの手を掴んで身を乗り出してきたのです。突然顔が近づいたものだから、思わず目をぎゅっと瞑りました。けれど、なんてことはありません、静さんはただスプーンのアイスクリンを食べただけで、すぐに身を引きました。
「……うん、美味しい」
 などと呟く彼を呆気に取られて見つめていましたが、自ら殿方に食べさせてしまった事実がじわりと現実味を帯びて、わたしは顔から耳にかけて熱が上がるのを感じました。きっと先ほどより真っ赤になっている顔を無防備に晒していることに、言いようのない恥ずかしさを覚えてわたしは机に突っ伏してしまいました。
「詩子さん?」
 静さんは驚いたような声を上げます。
 顔の熱が引くのを待って、わたしはじろりと静さんを睨みました。
「静さんはいけずなおひとです」
「えー……」
 そんな困った声を無視して、わたしは再び机に突っ伏しました。なんだか、急に納得がいかなくなったのです。静さんはいつでも余裕たっぷりで紳士的なのです。二十代後半の殿方からすれば、十代の女子なんてきっとまだまだ子どもなのでしょう。けれど、翻弄されてばかりでは、ずるいようなそんな気持ちになったのです。はしたないと思いながらも、けれど気持ちは正直なのです。
 からんとグラスの中で動く氷の音がしました。
 静さんは小さくため息をつくと、
「どうしたら許してくれますか?」
 まるで子どもをあやすような優しげな声音に、わたしは少し意地悪なことをしたくなりました。
「なんでも聞いてくださりますのん?」
 ようやく顔を上げ、その青い瞳を見返しました。静さんは少し怖気づいたように一瞬ぐっと言葉に詰まり、聞けることでしたらなんでも、と慎重に返しました。
 私は舞台の隅に置かれたセロへと目を向けます。
「静さんのセロが聴きたいです」
 そう言えば、静さんはさっと目を見開きました。
「え、今ですか?」
「そうです、今聴きたいのです」
 とたん、静さんは困ったように小さく唸りました。
 すると、そのやり取りの一部始終を見ていたらしいマスターが、細長い机の向こうで声を上げて笑いました。
「静くんの負けやな」
 そう言って、愉快そうに目を細めます。周りのお客様もくすくすと笑っているではありませんか。「静くんの戸惑った顔が見れるやなんて」と二人の婦人はにこにことして、本を読んでいた紳士は「ほう、有名チェリストの演奏が聴けるんか」とにやりと笑みを浮かべています。どうやら、彼らは皆常連さんで、そして静さんをよく知っているようなのです。
「マスター」
 助けを求めるように、声を上げた静さんにマスターは救いの手を差し伸べるつもりはないようです。
「弾いておあげなさいよ」
 と、どこか面白がるように言葉を返しました。
 静さんは少し考えるように、眉を寄せていましたが、やがて深いため息を一つ吐き出すと、
「一曲だけですよ」
 言い残して立ち上がり、舞台へと向かいました。店内を流れていた心地よい曲が止められ、静さんはマスターとなにやら準備に取り掛かります。椅子を舞台の真ん中に置くと、その場所に照明が当てられました。マスターはピアノの前に座り、静さんはセロを手に椅子に座りました。滑らかな調整の音が店内に広がります。
 静さんの視線が、ふいにわたしへと注がれました。そしてゆっくりと目を伏せました。長い睫毛が照明に当たり影を落とします。その瞬間を、わたしは息を止めて見守るのです。初めて彼の演奏を聞いたときから、その美しさに魅了されているのです。
 軽やかなピアノ伴奏が始まります。それに合わせて、重厚な音を静さんが奏で始めます。まるで歌声のように、弓を弦に滑らせ紡ぎ出されるその音色はただ美しく、深く、心の底まで響くのです。曲は優しく、軽やかに、くるくると踊るように奏でられます。ピアノの旋律と重厚なセロの調べ。そして何よりも、わたしは静さんのセロを奏でる手がいっとう好きなのです。骨ばった手が紡ぎ出す音は驚くほど艶麗なのです。
 わたしは目をそっと閉じて、一音も聞き逃すまいと全神経を耳へと集中させます。それはあまりにも贅沢で、幸せな時間でした。そして、あっという間に過ぎる時間でもありました。
 やがて、曲は終盤に差し掛かり、ピアノの高らかな音で幕を閉じました。
 わたしは暫しその余韻を味わってから、目を開けました。彼の青い瞳がじっとこちらを見つめていました。その真剣な眼差しに胸が高鳴ります。
 拍手の余韻もそこそそに、静さんは席へと戻ってきました。
「お気に召していただけたでしょうか、お姫様?」
 少し意地悪なその物言いに、わたしは背筋を伸ばしすました声で返しました。
「ええ、とても素敵な演奏でございましたわ」
 そして互いに見つめあって、どちらともなくくすくすと笑いました。
「僕は詩子さんにはかなわへんわ」
 素を出したまま、静さんがひどく甘い視線でわたしを見つめます。
「……静さんはひとを甘やかすのが上手だから、少し心配です」
 わたしは何となく呟きました。
 静さんは困ったように眉を寄せて、「前にも似たようなことを言いましたが」と前置きをします。
「僕は好きなひとにしか、甘くないですよ」
 その真剣な眼差しを受けて、わたしは右手の指先が疼くのを感じました。
 この場所に留まった最初の夜、彼が口づけた指先、その熱はふと思い出したように甘く痺れるのです。耳が熱を持ったのを隠すように顔を逸らし、わたしはただ「はい……」と弱々しく囁くのが精いっぱいでした。
 静さんはわたしの悩みや戸惑いも知った上で、それすらも受け入れるのでしょう。けれど、わたしは未だその気持ちにどう応えればいいのかわからずにいるのです。
 ふっと静さんは小さく笑みを浮かべました。
「ゆっくりでいいですよ」
 その言葉は、わたしの重たく沈もうとする気持ちを繋ぎ止めるのです。
 その手が珈琲カップへと伸びて、口へと運ばれます。流れるような所作を見つめてから、わたしは目の前のすっかり溶けたアイスクリンに視線を合わせました。溶けた白いクリームがメロンソーダと混ざって波のような模様を作り出します。からんと、氷が動きます。
「静さん」
 と、わたしはその名を呼びました。
「どうしましたか?」
 彼はいつだって応えてくれるのです。わたしはその優しさに、いつか同じだけ返すことができるのでしょうか。頼ってばかりの何も持たない少女。生きてきた時代の違うふたりが、いつか、同じように並んで歩くことが許されるのでしょうか。
 臆病な己を誤魔化して、わたしは笑みを作ります。
「さきほどの曲の名前を教えてくださいませんか?」
 静さんは頷いて、?詩を諳んじるように囁きました。
「《マイ・フレイヴァリット・シングス》」
 頭の中でその言葉を繰り返す。
 《My Favorite Things》――私のお気に入り。
 このかけがえのない時間のように、この新世界で、わたしのお気に入りのものは増えてゆくのでしょうか。
 この心が定まるまでその優しさに甘えてしまうわたしを、彼は許してくれるのでしょうか。
「僕はいくらでも待つ覚悟でいますから」
 顔を上げれば、微笑を浮かべた静さんの青い瞳がじっとわたしの瞳を覗き込んでいました。まるでわたしの心の内を見透かしたような優しい言葉に、鼻がつんと痛みました。視界が滲んで、頬にころころと涙が伝うのがわかりました。
 どうしようもなく、彼が好き。
 けれど、今はまだこの気持ちを言葉にすることできないのです。
「いつかきっと」
 伝える日が来る、その時まで。
 今はただこの幸せな時間をあなたと過ごせることが愛おしい。
 ためらいがちに頬に触れた指先が、そっとわたしの涙を掬いとります。その温かさが私をこの世界に繋ぎ止めるのだと、わたしは不器用な笑みを作りました。
 きっとこの涙も、いつかふたりにとっての大切な思い出になることを願って。